不育症、習慣流産
不育症、習慣流産とは
自然流産を繰り返し、なかなか出産までたどり着けない状態が不育症とされます。 その中でも妊娠22週未満で3回以上流産を繰り返す場合を習慣流産と呼びます。 さらに習慣流産の中でも、原発性習慣流産と続発性習慣流産に分かれます。これまで一度も赤ちゃんに恵まれたことがない方が3回連続して流産する場合を原発性習慣流産と呼びます。出産経験のある方が3回連続して流産する場合を続発性習慣流産と呼びます。一般的には原発性習慣流産のほうがなにかご夫婦に問題を抱えている例が多いとされます。流産には避けられない流産もあり、初期流産の原因の60〜70%は胎児の染色体異常によるものとされています。
検査
血栓性素因の有無
血液凝固能が強すぎで血栓症がおこりやすい体質の方は、胎盤を形成するもとになる組織にも血流障害をおこしやすく、流産率を高め、胎児発育不全を起おこしやすい場合があります。凝固因子や線溶系(血栓を溶かす)因子を調べることがあります。また、細胞膜を形成するリン脂質を自己抗体で攻撃して血栓症をおこしてしまう抗リン脂質抗体症候群という病気もあるので特殊な抗体を血液検査します。
子宮の形態異常
子宮卵管造影や超音波検査で確認します。比較的中期の流産に関係します。
黄体機能不全症
妊娠の維持に不可欠な黄体ホルモンの不足がないかを調べる血液検査です。
高PRL血症
異常値で流産しやすいともいわれています。血液検査です。
甲状腺機能検査
甲状腺機能異常で、流産しやすいとされていますので、適切な値に維持することが必要です。内科または専門病院に紹介します。
染色体検査
一見正常の方でも、染色体異常の保因者のことがあり、配偶子(精子や卵)ができるときに異常なものができやすく、流産しやすいことがあります。これを調べることによって、その後の見通しや対策を考えることができます。夫婦双方の血液検査です。
治療
補充療法
甲状腺ホルモンや黄体ホルモン不足に関しては補充療法を行います。甲状腺に関しては適切な治療を専門機関に依頼します。黄体ホルモン補充は当院で行っています。
低用量アスピリン療法
血栓性素因が診断された方に行う治療方法の一つです。妊娠28週まで1日1錠内服します。使用により血液凝固能低下が出現します。内服中止後も2週間くらい止血しにくくなるので、その間、歯科で抜歯したときやなにかけがをしたときに出血が止まりにくくなって困ることがあります。自費の治療になります。
ヘパリン治療
アスピリンと同様に、血栓ができやすくて流産しやすい人に使用します。アスピリン単独使用と比べると治療効果が高いです。また使用中止2-3時間で出血傾向はおさまるので、出産直前まで使用可能です。歯科の抜糸等ある場合でも、一旦使用中止すれば処置中の出血傾向は抑えることが出来ます。毎日自分で注射する必要があります。条件を満たせば保険適応があります。保険対象になる妊娠はかなりのハイリスク妊娠ということになるので当院での妊娠・分娩の取り扱いはできません。
漢方薬・副腎皮質ホルモン治療
漢方薬や副腎皮質ホルモンが有効というデータもありますが、それぞれ効果や副作用の点で疑問があり、上記の治療を凌駕するものではないと考えますので、当院では行っておりません。
免疫療法
以前盛んに行われた治療ですが、効果に疑問があり、副作用も心配されるので当院では行っておりません。
不育症の原因はまだわかっていないことも多く、精神的なストレスも原因とされています。妊婦さんへの愛情ある接し方で流産を防げるのではないかという考えです。意外と思われるかもしれませんが、妊娠前~妊娠中にこの精神的ケアを行うことで生児獲得率が上昇することが、海外でも国内でも報告されています。
当院で行っている「テンダーラビングケア」とは、優しく、愛情を持って患者様に接し、そして、いたわる”という、ごくごく単純な治療法です。当院のスローガンである「ひとにやさしい医療」こそ、それにあたると自負しています。